こんにちわ!
医療ソーシャルワーカーの「たれめ」です!
今回はソーシャルワーカーやケアマネジャーなどの対人援助職にとって基本中の基本「自己決定の尊重」「主体性の尊重」をテーマにお話します。
まずはこちらのツイートをご覧ください。
患者(クライエント)の自己決定が原則だということは、みんな知っていることだと思います。しかし「言うは易く行うは難し」…。
病院で勤務する医療ソーシャルワーカーは、病床の稼働を上げることを組織から求められます。診療報酬、在宅復帰率、稼働率など。民間病院では同法人の施設や介護サービスへの誘導をも求められ、苦しい思いをしている人もいるでしょう。
患者さんやご家族の思い、悩みに寄り添えているだろうか?
自己決定の尊重の原則は知っているが、現場での難しさを痛感している。
この記事を読むと以下のようなメリットがあります。
・患者さん(クライエント)の自己決定のための考え方、するべき行動が理解できる。
それではいきましょう!
クライエントの思いを聞き取れているか
家族が自宅は無理だって言うから、施設を紹介しないと!
ちょっと待って!
ちゃんと患者さんの話は聞きましたか?
あなたは患者さんと面接をして思いを聴取できていますか?
ソーシャルワーク実践の基礎として、「面接の重視」があります。
患者さん、ご家族の感情を受け止め、主訴を聴取し、「思い・希望」を整理しましょう。
医療ソーシャルワーカーの業務指針
(1)個別援助に係る業務の具体的展開「患者・家族への直接的な個別援助では、面接を重視するとともに、患者、家族との信頼関係を基盤としつつ、医療ソーシャルワーカーの認識やそれに基づく援助が患者、家族の意思を適切に反映するものであるかについて、継続的なアセスメントが必要である。」
急性期病院に勤めていると、とてつもなく短い期間で転院・退院調整をしなければならず、なかなか患者さんと話しができず、ご家族と話しを進めざるを得ないこともあるでしょう。
また、患者さんの意思が聞き取れない状況(意識がはっきりしていなかったり、高度認知症などで思いを聴取できない)もあると思います。
その場合はできるだけ患者さんの思いを確認できるように、家族やご家族や関係者からこれまでの様子を聴取しましょう!
「待つこと」が自己決定の入り口
脳梗塞で倒れてから、トイレも自分で行けず、身の回りのことができない。
家族に迷惑をかけたくないけど、家には帰りたい。
自宅退院が難しいなら、施設入所しかありませんよ!
時間もありませんから、この2つの施設から選びましょう!
ちょっと待った!
患者さんの悩みを聞いて、もう少し待ちましょう。
患者さん、ご家族の自己決定には時間がかかるものです。
患者さんやご家族の立場になって考えてみましょう!
病気やケガをして病院から迫られることは、どれも人生において重要なことばかりです。
患者さんやご家族が決めないといけないことの例
・侵襲性のある(リスクを伴う)手術や治療をするか、しないか。
・急変時(急に心肺停止や危篤状態になった時)にどこまで処置をするか。
・転院先をどこにするか。
・自宅で介護をするか、施設に入所するか。
・お金を誰が管理するのか。
どれもすぐに決められる問題ではありません。
特に患者さんの気持ちが聴取できない状態のときにご家族だけで、命に係わることや住まい、お金のことを決めることは大変難しいものです。
家族や親せきの中で相談したり、右往左往したり、今後も見通しや状態の変化でも気持ちは変わります。支援者としては、もどかしい気持ちになるかもしれませんが、患者さんや家族の気持ちになって、「待つ」姿勢でいることが重要です。
待てる勇気を持とう
いやでも、たれめさん!
先生からは「早く退院をさせて」って言われています。
病院としても、稼働率をあげないといけないって注意されるんです。
待ちたいけど、そうもいかないですよ~。
わかります!
病院はベッドを空けないと新たな治療を必要とする患者さんを受けられない。また病院もボランティアではやっていけませんから、稼働率の向上は必要です。他にも施設基準といって、病院機能上獲得しないといけないノルマのようなものがあります。その一つが「在宅復帰率」といい、自宅等に退院した割合を高めないといけないのも事実です。
しかし、やり方はあるはずです。
以下ができているかどうかで、大きく変わります。
・基本となる信頼関係の構築ができているか。
・患者さんやご家族の「揺らぎ」に理解を示せられるか。
選択を迫られる側は、不安でいっぱいですので「 A か B か 」のような迫り方をすると一気に信頼を失います。
決して「追い出し屋」にならないでください。
ベッドコントロールの調整を進めるだけなら、ソーシャルワーカーや看護師でなくてもいいはずですよね。あなたが病院と患者さんに挟まれて働くのは、寄り添える存在だからです。
患者さん、ご家族の可能性を信じましょう。
信じて「待つ」ことが、自己決定支援の入り口です。
早とちりの支援をしてしまうと、必ずどこかで歪みが生まれます。
待つことの「根拠」を、他職種にも示せるようにしましょう。
自己決定の原則の根拠は『医療ソーシャルワーカーの業務指針』や『バイステックの7原則』等があります。具体的には、急いで施設入所(退院先)を決めることで、今後考えられるトラブル(歪み)を示していくと、理解を得やすいです。
まとめ
2015年に大口らが医療社会事業協会の会員357名に調査した研究(※1)では、「医療ソーシャルワーカーの業務の困難性」に『多様で標準化困難な業務』『社会資源の限界』『要望と現実の業務ジレンマ』の3要素があることがわかっています。
今回のお話で、患者さんご家族の自己決定を「待つ」ことの重要性とその方法がわかったと思います。しかし、現実はうまくいかないこともあります。
どれだけソーシャルワーカーが訴えても待ってくれない環境であったり、患者さんの要望が現実的でなく生命の維持や最低限度の生活が保障されるものでないこともあります。
そのようなとき、あなたが病院と患者さん、ご家族の間で、ジレンマを感じて辛くなっているかもしれません。私も、日々感じています・・・。
しかし、ジレンマを抱えること自体、価値のあることだと思います。
ジレンマを感じるということは、あなたが倫理観をきちんと持てているという証拠です。
ただジレンマを抱え続けるのは辛いですので、仲間に打ち明けましょう。
所属機関内にいなければ、「医療ソーシャルワーカー協会」などの専門職団体で先輩SWと話すことで、理解者がいると心がスッとします。
また、ツイッターもおすすめです。ツイッター上には、多くのソーシャルワーカーさんもいて、悩みを聞いてくれます。私もよく活用していますよ。抱え込まずに悩みを聞かせてください。
たれめ
※1 大口達也ら(2016)「医療ソーシャルワーカー業務の困難性への影響要因に関する研究 : 所属組織の体制や医療ソーシャルワーカー業務の特性との関連に着目して」『立教大学コミュニティ福祉学部紀要第 18 号』
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