こんばんわ!
医療ソーシャルワーカーの「たれめ」です!
今回は脳卒中の当事者とそのご家族の悩みを学びましょう!
回復期病棟のソーシャルワーカーとして勤め始めたけれど、脳卒中患者さんや家族がどんな悩みを抱えているのか知りたい!退院した後、どんなことで悩んでいるんだろう?私の支援は充分だったかな…?
このような疑問に対して、一緒に学んでいきましょう!
この記事を読むメリット
・脳卒中の患者家族の悩みを知ることができる。
・ステージごとに起きる悩みを知っておくことで、適切な情報提供(支援)に活かせる。
・支援者としてできることのヒントを得られる。
・リアルな声(Twitterフォロワー様)を聞くことができる。
それではいきましょう!
👇脳卒中患者への支援者必見!! バリバリ外資系コンサルだった筆者。妻が脳卒中で倒れてから、在宅生活を送るまでに通った悩み、諸手続きをわかりやすくまとめておられます。患者視点で流れを理解できるから、患者さんにも薦めたい一冊。 実際勝手に病棟に置いていました(笑)
当事者・家族の悩みを知ろう
- アンケート調査の紹介
最初に「悩み」は個別性のあるものですので、目の前の患者さんご家族の悩みはしっかり面接して引き出してくださいね。
ここでは、脳卒中発症後、急性期から回復期、生活期という段階にいたるまでに脳卒中患者・家族が経験する困難さを紹介します。
それが、公益社団法人日本脳卒中協会の患者・家族委員会がまとめたアンケート調査「脳卒中を経験した当事者(患者・家族)の声」です。
詳細はこちらの資料を参照してください
目的 :脳卒中の経験者やその家族が、発症、治療期から⽣活維持期に⾄る過程で経験した困難や、知覚したニーズを明らかにすること。特に治療期から⽣活期にわたる相談⽀援体制、各種サポート資源、復職⽀援体制に関してのニーズを把握すること。
対象者:全国の脳卒中関連の患者会に呼びかけ、協力に応じた 8 団体の会員 1544人。そのうち回答を得られた567 名の脳卒中経験者または家族。
方法 :アンケート調査。2019 年 6 月に質問紙を配布、同 7-8 月中に郵送で回収。
※2020 年 7 月 1 日公益社団法人日本脳卒中協会患者・家族委員会アンケート調査報告書より引用
内容が難しいというかたもいるかと思いますので、私の言葉に置き換えて紹介しますね!
多少文言が違ってもご容赦ください。
見通しがわからなくて不安
まず「今後の見通し」に関しての説明が不十分と感じているかたが多い!
確かに急性期病院は、平均在院日数も短く1か月以内に転院をしなければならないことが多いです。そのような中、病状説明の機会も少なく事前に準備もできないことから、何を聞いたらいいのかわからないといったことが起きやすいのです。
回復期病院でも、どのくらい改善する見込みなのか、退院時期はいつくらいかといったことに対して説明が不十分であるという結果となっています。
また在宅に移行するときにも「相談窓口がわからない」「病院の都合で退院と言われた」といったことがあるようです。
急なことで患者も家族も不安でいっぱいです。いまの治療の細かいこと(検査結果がどうとか、薬を変えようとか)も大事だけど、これから私または私の大切な人はどうなるのか?そっちのほうが心配!できることは尽くしたい。何ができるのか、何を考えなくてはならないのか、いつ何をしたらいいのかを教えてほしい。このような思いでいることでしょう。
病院関係者ができること
・入院期間、治療計画、予後をしっかり伝える
・転院調整の際は転院先の情報を適切に伝える
・転院・退院のタイミングで支援が途切れないように相談支援機能を繋いでいく
・患者家族が理解しやすい形で情報提供する
自分に合ったリハビリがない
回復期を退院したあと、地域でリハビリテーションを受けようとしたときに「なんで私(家族)に合ったリハビリがないの?」って思う。悲しいですが、このような声も多いです。
これには以下の要因が考えられます。
・地域にリハビリテーションの受け皿がない
・言語訓練を受けられるところが極端に少ない
・若年者が通いやすい介護保険リハビリテーションがない
・自費リハビリを勧められるが高すぎる
・職業リハビリテーションの認知度が低い
・障害サービス、就労サービスに医療分野、介護分野が疎い
あくまで私の主観ですが、長年回復期MSWとしての経験から感じます。
支援者ができること
・入院中に退院後のリハビリ計画を立てる
・外来リハビリに柔軟に対応する医療機関の情報を持つ
・言語訓練を受けられる資源の情報を持つ
・在宅退院者に訪問リハビリテーションは有効
・地域にリハビリが足りないなら、その課題を組織・地域に発信する(または作る!)
・医療・介護・障害・就労サービスが連携を強化する
・「リハビリがない」と支援者が諦めない!
制度や手続きが煩雑すぎる
制度や手続きは本当に煩雑です。正直病院に勤めるソーシャルワーカーもすべてを把握できていない者もいます。
医療保険、介護保険、障害者総合支援法、自立支援医療、傷病手当、障害年金、指定難病…。
どれも難しく、それぞれが影響するため、すべての領域に精通しているのはソーシャルワーカーでも困難さを感じるほどですので、一般の患者さん家族が理解しにくいのも無理はありません。
アンケート結果でもありますが、障害年金や自立支援医療を知らずに過ごしている人もいるという声もありました。日本は申請主義ですので、該当するのに申請しないことで知らずに損をしてしまっていることがあるのです。
支援者ができること
・医療ソーシャルワーカーは他分野の情報もしっかり学ぼう
・疾患ごとに利用可能な制度や手続きをまとめておこう
・行政もワーカーも「決まりだから」「他に聞いてください」などいったことをしない
・わからないことも調べて情報提供しよう
働きたいのに支援がない
脳卒中は40-50代といった現役世代も多く罹患します。
「働くこと」は経済問題とも直結しますので、決して軽視できません。患者さんの社会復帰は、支援者としては常に考えなくてはならない問題なのです。
しかし脳卒中患者さんの復職率は50-60%という報告があります。(※1)
これは職務内容や症状によっても異なりますし、かなりの時間を要して違う部署で働くといった方も含まれていますので、体感的にはもっと少ないと思います。
※1 事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン
病院から復職に対するアドバイスを受けられず退院されることが多いように感じます。復職を考えられるということは、症状も軽くて日常生活(トイレやお風呂動作など)が自分でできるような方ですので、病院としては早期退院の対象になります。
職場の理解が得られにくかったり、以前のようにうまくコミュニケーションがとれなかったりして退職を余儀なくされることもしばしばあるようです。
支援者ができること
・病院として「治療と仕事の両立支援」を推進する
・両立支援コーディネーターを受ける
・産業保健との連携を深める
・職業リハビリを受けられる資源とつながる
・障害・就労分野は医療と連携を深める
・可能なら入院中に職場と話し合いの場を作る
・病院は退院後のフォローを行う
障害への理解が乏しい
「失語症、脳卒中に対する社会の理解が不足している」と感じている人も多くいました。いわゆる「見えない障害」に対する理解が得られにくいのです。
失語症という症状や、疲れやすさ、高次脳機能障害による注意障害など。
仕事を再開するときや社会生活をするなかで、障害として認知されにくく、人間関係もうまくいかないといったことが起きます。
また先述しましたが、言語障害に対するリハビリを受けられる施設が少ないこともあります。言語聴覚士という職種が全国的にまだまだ少ないことが要因です。
支援者ができること
・社会に対する障害の理解の啓蒙
・復職の際には職場に対して勉強会や指導を行う
・家族に対しても疾患、障害、関わり方について指導を行う
入院中のリハビリ指導といえば、トイレや歩行といった動作指導がメインになっている気がします。支援者側がこのような「見えない障害」に対して、今後関わっていく方にきちんと指導していくことが必要と考えます。
Twitterで出会った当事者の声
最後に許可をもらった2名の当事者の方々の声を紹介します。
ぴん@pinLittleMYさんの声です。
私は病院退院後にリハできる唯一の方法は障害者施設に入所してのリハビリしかないと言われて入所しましたが…料金のほとんどは市から免除されてるとは言え個人負担は月に6万。傷病手当をもらってるとは言えきつかったし。自分のしたいリハは全くできず集団リハなので何度も転倒し怪我ばかり。もうここにいてリハして行く意味はないと思い自主退所を決めました。しかしそこのPTは退所後もどこかでリハ継続した方がいいと言うだけで何も教えてくれず一つ教えてくれたのが自費リハでした。一回2万円はさすがに払えません。自分で必死でネットで調べ訪問リハで鍼灸師さん、PTさんのリハが医師の訪問看護指示書があればできると知り自ら動き主治医に説明し納得してもらい今は在宅で週に3回リハビリ受けてます。(中略)どうして病院は訪問リハを勧めないのでしょうか。病院のPTさんはリハ期限なのでこれ以上は医療のリハは受けれませんと突き放し患者は途方に暮れてる現状です。私は今40代でまだまだ働ける年代。私が80代くらいなら在宅に帰ってゆっくり余暇を過ごしてもいいのかなとは思います。医療者の方にもうちょっと親身になってリハ期限切れた患者に寄り添って退院後のリハを望む者に選択肢を作ってほしい。絶対退院後とか外来リハ期限の切れた患者は困ってます。ぜひ発信してほしいです。お願いします。
じゅんぜる@NYrrOT0gPVctBReさんの声です。
51才の子なしの専業主婦です。2020.7.21 39才の旦那がモヤモヤ病からの脳梗塞で左方麻痺になりました。難病申請通りました。高次脳機能障害で注意障害、左反則空間無視、構音障害等有りです。お金の事や生活の事等、誰にも言えない心の叫びを呟いていきたいです。
今回旦那の年齢が40才まであと少しという事や担当の介護士さんは、医療保険適用のデイサービスを使った方がいいんじゃないかと言われました。医療保険と介護保険でやれるリハビリの違いだとかもこれから勉強や相談していくつもりです。
許可をいただいたお二人には大変感謝いたします。
リアルな声はとても意味のあるもので、支援者・当事者ともに心に響きます!
私も「ハッ」とすることを教えていただきました。
↓これもつかえますよ(^^)
脳卒中の 治療と仕事の両立 お役立ちノート(厚生労働省)
まとめ
いかがだったでしょうか。
脳卒中患者さんや家族がどんな悩みを抱えているのか知ることができたと思います。あなたが勤める病院で過ごす患者さんだけでなく、その後どのようなことで困っているのか理解することで、これからの支援に活きてくると思います。
それは、患者個人レベルであったり、病院組織~地域レベルであったり、全国(制度)レベルで支援者であるあなたが動くことはできるはずです。
研究発表であったり、地域ケア会議に参加したり、SNSで発信するのもいいと思います。
地域や全国的な問題は解決できない?
支援者、当事者ともに力を合わせればできるはずです!
ともに成長していきましょう!!
たれめ
コメント